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淡水フグとは?
What is a freshwater puffer fish?

 
淡水フグとは、終生のほとんどを川や湖、池など、まったく塩分のない淡水域を生活の場にしたフグのことをいいます。世界には6属約40種類の淡水フグが東南アジア、アフリカ、南米の熱帯に分布しています。南米には2種、アフリカには6種、スマトラ島やボルネオ島を含む東南アジアには30種類を超える沢山の種類の淡水フグが確認されています。
海のフグとは異なり、飼育に塩分は全く必要がないので金魚と同じように飼育が出来ます。ただし、熱帯に生息しているため、冬場のヒーターは必須です。また、生息場所によって水質が弱アルカリ性だったり弱酸性だったりするので、生息域の水質を正しく理解して飼育することが大切です。

ショップでよく見かけるミドリフグは、海に近い河口など塩分を含む汽水域にいるので淡水フグではなく、汽水フグと呼ばれています。近年、”完全淡水ミドリフグ”という名称で販売されているミドリフグがいますが、ミドリフグは淡水への順応性が高いため、一時的に淡水域へ侵入したものが捕獲されただけで、汽水産のミドリフグと何ら変わりはありません。淡水でも一時的には飼育出来ますが、そのまま淡水で飼育を続けると、原因不明の突然死を迎えることになり、本来ならば10年ほど生きられるところが寿命を全うさせられません。本来ミドリフグは、幼魚期は淡水〜汽水域で生活し、成長に伴い生活の場を海へと移していく海水フグです。


メフグ
中国のメフグは、海水フグでありながら海から数千キロ離れた淡水の湖まで遡上して産卵し、孵化した稚魚は淡水で成長し海へと帰っていきます。稀に産卵を終えた個体の中に翌年の産卵期まで湖で過ごすものもいることから、淡水への順応力はかなりのものだと思われます。実際メフグは海水1/4の塩分でも問題なく飼育でき、成魚まで育てることも可能です。
日本に生息するオキナワフグも海水魚ですが、淡水への順応力が強く、川で餌を求めて泳ぐ姿を見ることが出来ます。

川で泳ぐオキナワフグ
以上の事から海水・汽水フグが淡水フグとしてショップで売られていることは珍しいことではありません。また、海水フグが淡水フグとして熱帯魚ショップに入荷されたときは珍種として海水魚ショップの数倍の価格になっていることがあります。購入したフグが、どのような水質、また生息場所にいるのかを調べることは大変重要です。本来、塩分の必要なフグを淡水で飼育できると謳われると魅力的に思えるかも知れませんが、結果的にはストレスを与え寿命を縮めてしまう事になります。

■テトラオドン属[Tetraodon]

ムブ(幼魚)

ムブ

ファハカ(幼魚)


ファハカ

アフリカには、6種類のテトラオドン属の淡水フグがいます。ムブ種は世界一大きな淡水フグ、60cmを超える大型種で、コンゴ川・タンガニカ湖に生息している。入荷は10cm未満の幼魚が多く、成長するに従い、唐草模様は複雑になり、尾びれは、オレンジ色のレースのように大きくなり美しくなります。

ファハカ種も40cmを超えるやや大型の淡水フグです。砂の中に潜る性質があり、肉食性の強いフグです。生息域は、西アフリカ全域、エジプトのナイル川にも生息しており、ピラミッドの壁画にはファハカの彫刻が刻まれています。ファハカには、rudolfianusルドルフィアヌス種とstrigosusストリゴスス種という亜種が確認されており。ルドルフィアヌス種は、ケニア北部にあるトゥルカナ湖に生息、トゥルカナ湖は湖の中にある火山の影響でアルカリ塩湖という特殊な環境になっています。湖の水を農作物にかけると枯れてしまうといいます。そういった特殊な環境のせいか、体長が10cm未満といわれていますが、採集個体を見る限り、15cmくらいまでにはなるそうです。ルドルフィアヌス種は、ニジェール川に生息しており、ファハカ特有のレモン色と小豆色のラインの小豆色のほうが、細く、黄色いラインが太くなる特徴があります。それ以外の差は特に見受けられません。


ミウルス


ドゥボイシィ

アフリカの淡水フグには砂に潜る種が比較的多く、ミウルス種、ドボイシィ種も、口と目だけを出してよく砂に潜っています。主に、寝るとき、獲物を捕食するときなどに潜ることが多く、両種とも魚食性が強く、気性が荒いという特徴があります。

ミウルス種は、コンゴ川下流に生息し、個体差が激しく、多彩な体色で知られています。ベージュ、こげ茶、白、ゴマ模様、オレンジ、赤とバリエーションは多いですが、環境によって体色を変えるため、購入した時の体色を維持出来ないこともあります。

ドゥボイシィ種は、入荷が少なく大変希少な淡水フグです。コンゴ川のマレボ湖という限られた場所に生息するといわれています。黒いスポット模様が腹部以外、均一に入っているので、ミウルスとの判別は比較的容易です。ミウルスと比べて潜らない場合も多く、獲物を積極的に追いかける事もあります。


ショウテデニィ

近年では、入荷も増え、ブリードも盛んになったショウテデニィ種
サイズも10cmを超えることはなく、性格も比較的大人しいことから、益々人気が出る淡水フグとなる


プストゥーラトゥス幼魚

中央アフリカのカメルーンとナイジェリアの国境を流れるクロスリバーからは、プストゥーラトゥス種(クロスリバーパファー)が入荷される。2003年まで生態写真ですら見ることが出来なかった。日本への入荷は稀で、入荷されても非常に高値である。成長するとマングローブがある、河口付近に生息域を移すといわれている。ドイツの採集家の話では、なんと150cm近くまで大きくなるという噂もありまだまだ謎に包まれたフグである。


プストゥーラトゥス若魚


■パオ属[Pao]


東南アジア最大の川、メコン川やその流域は、沢山の種類のフグが生息しており、世界一淡水フグの宝庫と呼ぶにふさわしいところです。
中には種の判別が困難な種や新種登録されていない種なども多く、まさに淡水フグの様な容姿やスポット模様から数種類の種が
そのため、学名があやふやなもの、名前が特定できないもが、入荷され、業者関係者やショップの人たちを困らせています。正体の分からなかったフグは、メコンフグ、マレーフグ、マライアンパファーという大雑把な名前で売られることになります。
なぜ、そのように沢山の種類のフグが生息出来るようになったのか?それは昔、暖かい珊瑚礁であった海が陸地となり、そこに取り残された海水産のフグが、長年の年月をかけて徐々に淡水に順応していったと推測できます。また、陸地に残った珊瑚の残骸が雨で侵食され、川に流れ込み、海並みの高いPHの川を作ったことが、多くの淡水フグを生み出す秘訣となったのでしょう。
 実際メコン流域へ行くと本当に多くのフグを見ることが出来ます。中にはどの種に特定したらいいのかわからない種も多く、非常に悩まさます。中には、混雑種であろう種も数種類、確認されました。
 また、タイ北部やラオスには、未だ発見されていない新種も多く、清流域の全長3cmの石の下に生息するフグの生息情報や、数種類の新種らしきフグ、未登録のフグを採集することが出来ました。


強い緑色をした不明種


ラオスで採集された種


マライアンパファー


未登録種


レッドスポットメコンフグ


メコンフグ


レイウルス

入荷はそれほど多いないが、メコン川流域からは、20cm前後の中型のフグが3種類いる。1種は、レイウルス種(アイスポッテッドパファー)メコンフグより細長い口が特徴。またレイウルスにそっくりの色違いのフグもいる。バルバータス種(ビルマフグ)といい、レイウルスの黄土色の地味な色に対し、メタリックグリーンの体色に腹部が乳白色となかなか美しい。入荷量はレイウルス種より少ない。
あと、1種は、体系がアフリカのミウルス種によくにたスバッティ種、砂に潜り、頭部にあるV模様が特徴だ。大変凶暴な性格である。


スバッティ


バイレイ

全身毛(皮弁)に覆われた、奇妙なフグ、バイレイ種。大きさは13cm前後。メコン川本流でも生息が確認されている。
また、アベィ種も以前はメコンフグという名前で入荷されていたが、近年判別されて入荷されるようになった。興奮するとスポットがオレンジ色になり、尾びれにまでスポットが入ることで、メコンフグと区別することが出来る。こちらも以前は、渓流域に生息しているといわれていたが、メコン川本流でも多く確認出来る種であり、現地ではそれほど珍しい種ではない。


アベィ


レオパードパファー

アジア大陸の南に位置するボルネオ島やスマトラ島にも数種類の淡水フグが生息している。島に広がる広大なジャングルは世界最古ともいわれており、樹木が落とした大量の葉は川底に沈み、葉の養分タンニンが染み出した川は、赤や黒に染まり、水質は酸性に大きく傾いている。そのような色がついた川は、ブラックウォターと呼ばれ、特殊な環境を形成している。そのような、特殊な環境に特化したフグを紹介しよう。顔が’ダルマ’のようなパレンバンゲンシス種(レオパードパファー)ボルネオ島、スマトラ島のインドネシア領に多く生息している。大きさは20cmと中型のフグである。また、別名、スマトラパファーと呼ばれているように、スマトラ島からの入荷が多い。体の横には目のような模様がいくつかあり、大変臆病なフグである。レオパードパファーによく似た種で、ハイゲンドロフズ種がいる、生息地は、ボルネオ島のカプアス水系からしられており、パレンバンゲンシス種より小型で10cmを超えることはない。現在のところ日本への入荷は確認されていない。


ハイゲンドロフズパファー

 


■カリノテトラオドン属[Carinotetraodon]


アベニーパファーやアカメフグなど小型の淡水フグのグループです。全6種類、繁殖行動や威嚇のときに背中と腹部の皮をニワトリのトサカのように伸ばす行動が知られています。

アベニーパファー
トラヴァンコリクス種、通称アベニーパファー(アベニールパファー)は、インド南部の西側とスリランカに生息する世界最小のフグです。2.5cmから繁殖可能で雌雄の判別も比較的容易であり、また淡水フグには珍しく集団で生活していることから複数飼育が可能なこともあり、淡水フグの中でももっとも繁殖例が多い淡水フグとして知られています。

イミテーター種は、インド、カルナータカ州にあるNethravathi川とその支流であるKumaradhara川の限られた地域にしか生息していない淡水フグです。日本への入荷は稀で、大きさは5-6cmとアベニーパファーより一回り大きくなります。オスは成長すると全身黄色く染まり、メスはウズラの卵のような模様に黒い小さな斑点が多く見られます。

イミテーター:オス

イミテーター:メス

ボルネオアカメフグ

レッドテールアカメフグ
アカメフグの仲間は全4種類、小型で最大でも7cmほどにしか成長しません。またアカメフグの仲間の仔魚は孵化してすぐに川を降りて河口で育ち、成長してから川に戻るという習性が知られています。

ボルネオ島に固有種が2種、スマトラ島に1種、タイ、カンボジアに1種

小型のフグ、カリノテトラオドン属4種もブラックウォーターに生息する代表的なフグである。この属のフグの特徴は、オスとメスの模様が別種とおもわれるほど、異なることである。またオスは婚姻色になると大変美しい。 ロルテッティ種(アカメフグ)は、水質の変化に弱い面があり、飼育は淡水フグの中で一番難しい、オスは繁殖期に全身メタリックパウダーブルーに染まり、背びれ、尻びれが赤く染まる。生息域は、タイ、ベトナム、カンボジアだが、スマトラ島の北部にも生息している。イルベスコ種(レッドテールアカメフグ)は、体系が細長い特徴を持つ、生息地はボルネオ島の西部の一部とスマトラ島である。比較的大人しいほうだが、オスは成長すると凶暴になる。繁殖期には、尾びれから頭部にかけて赤く染まり美しくなる。

ボルネンシス種(ボルネオアカメフグ)は、ボルネオ島の限られた地域に生息しており、頭部にオスもメスも鮮やかな黄色の▽(逆三角模様)が確認出来る。ブラックウォーターでも確認出来るが、汽水の影響を受ける、アルカリ性の川に多く生息している。残念ながら日本への入荷はない。サリバトール種(タイガーパファー)は、虎柄をした淡水フグの中で最も美しいフグである。ボルネオ島のマレーシア領に生息しているが、ジャングルの開拓で年々数を減らしている。ブラックウォーターでも確認出来るが、中性のやや流れのあるクリアウォターの川で多く見ることが出来る。日本への入荷は非常に稀である。

ロルテティ

サリバトール



■アウリグロウバス属[Auriglobus] クォネリヒーノス属[Chonerhinos]
 
ゴールデンパファー、またはブロンズパファーと呼ばれている淡水フグで東南アジア全域に生息しています。ブロンズパファーは、似たような種類のフグがあと4種類いて、容姿が似ていることから判別が難しく、あまりメジャーな存在となっていない。ただ、1種類、汽水域に生息して、オスは小さいが、メスは30cm前後に成長する種がいる。


■コロメスス属[Colomesus]

世界一流域面積が広いアマゾン川が流れる南米から輸入される淡水フグは、以外に少なく、コロメスス種(南米淡水フグ)1種類、のみである。ただし、南米淡水フグは、ブラジル、コロンビア、ペルーと広域にわって生息しているため、模様や体型に違いが見られる、3種の亜種が確認出来る。
また南米淡水フグに似た南米汽水フグ(クロオビフグ)も南米から入ってくるが、両種の見分け方は、体に入っている黒いバンドの数で容易に判別出来る。南米淡水フグは目の上から数えるバンドの数が5本なのに対し、南米汽水フグはバンドの数が1本多く、6本ある。




■レイオドン属[Leiodon]


ミャンマーを流れるブラフマプトラ川からインドにかけて、1種1属のレイオドン属、ククッティア種(エメラルドパファー)がいます。小型のフグで5-6cmほど、エメラルド色の美しい体色に尾の先端が赤く染まる小型の美しいフグです。容姿で雌雄判別可能なことから、飼育下での繁殖例も多く、石や葉の上に産卵してオスが卵を守ります。タイ西部やマレー半島の北部にも生息しています。